仙台高等裁判所 昭和27年(う)428号 判決
記録を調査するに所論のとおり原審検察官は第一次的訴因として業務上保管にかかる政府所有の余剰米八俵八斗の売却横領の事実を述べ第五回公判期日に、右政府米十俵を被告人等は共謀の上組合のため不正に領得して横領したものであると訴因を予備的に変更し、更に第六回公判期日に被告人石橋伝については訴因に予備的に横領の事実を追加し罰条刑法第六十五条第二百五十二条を追加した事実及び右訴因の予備的変更の請求は弁護人の同意をえて之を許可した事実を認めうべく、しかるに原判決は被告人等は共謀の上余剰米十俵を着服横領したものと認定し、なお被告人石橋伝については刑法第六十五条第二百五十二条を適用して処断したことを確認しうるところである。しかして右予備的変更の訴因として述べた事実については犯行の日時場所について改めて明示されていないが右予備的変更の訴因は第一次的訴因の事実と同一事実について業務上の売却による横領罪でなければ業務上の不正領得による横領罪であるというのであるから第一次的訴因事実記載の犯行の日時、場所はそのまま予備的変更訴因の事実に引用して考慮するを相当とする。しからば犯行の日時、場所が明白に示されていない予備的変更訴因は失当である旨の所論は採用の限りでない。剰え犯行の日時、場所及びその方法等は公訴事実を特定させるため明示することは望ましいことではあるが之を欠くからといつて必ずしも常に其の公訴を無効とするものではないのであるから前記所論の理由ないことは一層明らかである。
次に予備的変更訴因においては不正に領得して横領したものであると表現したのみで着服か拐帯か消費かによる横領の態様を明言していないことは所論のとおりであるが余剰米十俵を不正に領得して横領したとの公訴事実について原判決の如く之を着服して横領したと認定したからといつても右不正領得による横領の観念中には着服による横領の観念も当然包含されているというべきであるから原判決の如く認定したとしても毫も被告人の防禦に影響を及ぼす虞はないものと認むべきである。従つてこの点に関する所論も採用の限りでない。
更に原審は第一次的訴因について審判を遂げなかつたか否かにつき調査するに原審は第一回公判期日より第五回公判期日迄五回に亘つて第一次的訴因に基く事実を対象として審理し判決において結局予備的に変更になつた事実を認定したのであつて、斯る場合第一次的訴因である売却による横領の事実を認めなかつた理由を示さなくとも其の趣旨であることは自ら明瞭であるから之を明示するの要はないものと解すべきである。